いつかの桜

〜メイプルストーリーに関する日記と ギルド「甘栗」の活動日誌です〜

第5話 ギルド

目が覚めるとベッドで横になっていた。
もしかして、今までの全部夢だったとか?
という事は全くなかったのだけど。

「起きたか?いや〜、わりぃわりぃ」

声のする方を見ると、
ひらひらのついた、黒と白を基調としたドレスを着た女が座っていた。
いわゆる、ゴスロリの服である。
金髪で青い眼をしており、病的なまでの白い肌だった。
西洋人形が椅子に座っているようだ、
と言えば適当な表現かもしれない。
片目に包帯を巻いているのも案外ファッションの一部な気がする。

「ここはどこなんだ?」

「あぁ、ここはうちのギルドが借りてるログハウスでな。

 ヘネシスからそう遠くない場所だぜ」

西洋人形みたいな整った顔立ちからは想像しにくいが、
喋り方はなかなか大雑把なものだった。

「ちょっと何が起こったのか分からないんだけど…」

「それがな〜、説明するとな…

 俺がリス港をフラッシュジャンプで移動してたらおまえにぶつかっちゃってさ。

 5mくらい吹っ飛んだと思ったら気絶してるし、

 とりあえずここに運んで寝ててもらったわけなんだよ。

 すまなかったなぁ」

「フラッシュジャンプ?」

「盗賊の移動スキルさ。すげー速いスピードで動けるから便利だぜ」

うん、スキル?また分からない単語が一つ…
とにかく速く移動する手段ってことだな。

「しかしなぁ、通行人にぶち当たるなんて初めてだわ。

 メイポって他プレイヤーに危害を加えることなんてできないはずなんだけどな…」

両手を組んで考える素振りをする西洋人形は、
5秒後にはあっさりと、

「分かるわけねーな」

と言って一人でけらけらと笑っていたのであった。
西洋人形がひとしきり笑った後、
タイミングを計ったように、ログハウスに人が入ってきた。
白いタオルを頭に巻いている男は、
女を見るなり呆れた顔をした。

「ルネ、おまえまた問題を起こしたのか…」

「あっはっは、そうみてーだ」

西洋人形の名前はルネと言うらしい。
どことなくヨーロッパにいそうな名前である。
ルネと呼ばれている女を無視するように男が俺に話しかけてきた。

「すまなかったな。こいつは悪いやつじゃないんだが、

 どうにも問題を起こす才能があるらしくてな…

 後できつく説教しておくから、許してくれないか?

 ルネ、おまえもちゃんと謝れ!」

子供をしつけるように一喝する男は、まるで親のようだった。

「ごめんなー」

半ば投げやりな謝り方に男は何か言いたそうだったが、
言うのを諦めたらしい。

「気にしないで下さい。突っ立ってた俺が悪いので」

「すまないな。

 どうやら見た感じ初心者みたいだし、
 
 お詫びとしてルネにしばらくレベル上げを手伝わそうと思うんだが、

 どうだろう?」

思いがけない提案だが、ここは一つ聞かないといけないことがある。

「レベル上げって、何です?」

「おぉ、なかなか初々しい質問だな。

 レベル上げってのはだな、モンスターを倒して戦闘技術やスキルを磨く作業のことだ。

 レベルを上げないとできないことは沢山あるからな。

 ふむ…おい、ルネ!この子のレベル上げ手伝いながら知らないこと教えてやれ!」

「へーい…マスターは相変わらず人遣いが荒いぜ…」

口をとがらせながら、聞こえるか聞こえないかの小さい声でつぶやいていた。

「そうだ、遅れたが君の名前は?」

「ヒロって言います」

「ヒロ君か。ルネに、分からないことあったらまた遠慮なく聞いてくれ。

 俺からもヒロ君に友録送っておくから、ルネがふざけたことしたら言ってくれよ」

「すいません、友録って?」

「友録ってのは、友達登録の略でな。離れた人といつでも話ができる手段のことさ」

この世界には携帯電話がない代わりに、その友録で話をするってことか。
でも、ティエンクってやつは携帯電話みたいの持ってたような気がする。
まだまだ分からないことは多そうだ。

「ちょっと待ってな。実際に友録送ってみるから」

封筒を胸ポケットから取り出すと、男はペンでさらさらと俺の名前を書き始めた。
書き終えると封筒を頭上に放り投げ…
空中で一旦停止をすると、
俺の元に一直線に向かってきて目の前で止まった。
誰も触れてもいないのに、封筒は勝手に開き、メッセージが出てきた。
メッセージには、

「茶筒」様から友達登録の招待が来ています。承認しますか?

とある。

「茶筒…?」

「あっはっは、俺の名前だ。変わってるだろ?

 封筒に向かって、はい、って言うと手続きは完了だ」

封筒に向かってハイと答えると、封筒は景色の中に溶けるように消えていった。

「これで君といつでも会話できるってわけだ。

 どんな風に会話が聞こえるかは、離れた時のお楽しみだな。

 それじゃ申し訳ないけど、俺は行くわ。

 友から呼び出されててな。じゃぁな」

茶筒さんは手を振るとログハウスから出ていった。
残されたのはルネと呼ばれた女と俺。

「ヒロって言ったっけ?レベル上げも知らねーようじゃ、狩りもしてないんだろ?」

「したことないな」

「とりあえずレベルを上げて転職した方がいいな。

 っと、転職しようにも職業のことから説明しないといけないんだな…

 移動しながら説明するわ。はい、石」

いきなり光る石を渡された。
石には記号のような文字が彫ってある。

「とりあえずチャーリーのとこ行くか」

「チャーリー?」

「とりあえずついてくれば分かるぜ。」

そう言いながら、ルネは俺の肩に手をのせると、

「オルビス」

とだけ言った。
その瞬間、景色はログハウスから一瞬に別の場所へと変わった。




第6話に続く→




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